或る草の音

そこにある音楽 ここに置く音楽

2021年春のピアノリレー参加記二題 その2:那珂川市のピアノリレー(ピアノの祭)

 

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春というより早春なのだろうけれど、今年の春は一般参加のピアノイベントに2つ続けて参加した。221日に春日市ふれあい文化センターの「ピアノリレーマラソン」に参加したことは前回(ふたつ前の)記事に書いた。

https://draume.hatenadiary.jp/entry/2021/02/27/210342

 

その翌々日の223日、今度は那珂川市のミリカローデン那珂川で開催されたピアノリレーに参加した。

 

那珂川市のピアノイベントは毎年この時期、「ピアノの祭」という名称で開催されている。公募方式、エントリー1組につき5分以内で演奏できるのは春日市のイベントと同様。例年だと午前の部と午後の部に分かれ、各部の最後に集合写真を撮るのが「ピアノの祭」の特徴だった。

今年はその方式が簡略化され、午前中だけ、プログラムなし、MCなし、舞台袖での待機なし、出演者は客席に待機して名前だけ呼ばれて直に登壇して演奏(その直前に手指消毒)、集合写真なし、という方式になった。コロナ禍の中で実施可能な方法を検討してくださった結果だろう。「ピアノの祭」から今回「ピアノリレー」という呼び名に変わったのは、そのあたりの方式の変更を踏まえてのことだったのだろうと思う。

 

「ピアノの祭」も近年はエントリーが難しくなっていた。窓口受付開始の当日早くに定員が埋まる。こちらも私は申込みが何度か間に合わなかった。今回も難しかろうと思いながら申込みに出かけていったら、ぎりぎりでエントリーできた。

プログラムとMCがないということで、曲目の申告もなく、それなら弾く曲は当日その場で決めようかと思った。ふだんロビーや駅の公開ピアノを弾くときにはたいていその場で、この曲を弾こうかと思って弾き始める。ある程度の心づもりはしているけれど、この曲はちょっときょうのこの場所の雰囲気では合わないというような判断をすることもある。そういう、公開ピアノを弾く感じで臨んだらどうだろうと思っていた。

 

ただ、今回春日でグリーグの「春に寄す」を弾くことにしていたので、春日では以前弾いたけれど那珂川では弾いていないグリーグの「春」(弦楽版『2つの悲しい旋律』op.34の中の)を弾きたい、という気持ちがあった。ミリカローデン那珂川ではロビーのピアノが一般公開されていて、手続きすればどなたでも弾くことができる。そのロビーピアノでは以前何度か「春」を弾いたことがあるけれど、ステージではまだない。

当日の前の日くらいまでいくつかの曲を準備して、やはりその場で決めるようにしようとは思ったけれど、当日会場に向かうバスの中で、向こうに見える山の景色を見て、やっぱり「春」が弾きたいと思った。

 

出演者は開演前に受付だったため、当日は客席で最初から他の出演者の方々の演奏を拝聴した。プログラムがないのでどういう方がどういう曲を演奏なさるかわからない。ちょっとスリリングというか、聞いてからのお楽しみというか、おもしろい時間になった。出演なさったのはやはりこどもさんが多く、私もむかし習ったような曲や最近流行している「紅蓮華」や「千本桜」などの曲、それから発表会やこどもさん対象のコンクールで課題曲になるような曲が主だった。そこにおりおり大人の方が加わるという流れだった。親子連弾の方々もいらっしゃった。

情熱大陸ブラームスのラプソディト短調ショパンのワルツホ短調遺作、ベートーヴェンのエコセーズ、さんぽ、戦場のメリークリスマス、糸、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(連弾)、ラ・カンパネラ、など、いろいろな曲が聴けた。メモをとりながら、この曲はと曲名当てクイズを解いているような気分だった。素朴な音、流麗な音、豪快な音、丹念な音、いろいろな音が鳴り響いていた。こどもさんの演奏を、先に演奏を終えた年上のこどもさんが客席で上体で拍を取りながら聴いていたのが心に残った。

 

自分の演奏はあっというまに過ぎた気がする。この演奏で何ができたか自分ではわからない。でもどんなときの演奏もそれはそうなんだろう。

 

会場となったミリカローデン那珂川の文化ホールは来年度、今度の4月から1年間の改修工事に入る。「このホールで」ピアノを弾くのは今回が最後。終演後にステージに登ってめいめいで御家族ごとグループごとに写真をお撮りになっているこどもさんたちの姿を、客席の後ろのほうから眺めた。しあわせの景色だった。また改修後、「ピアノの祭」が再開されて、同じ景色がここで見られるだろう。

 

ホールを出ると、ロビーのピアノで、さっき出演していたこどもさんがステージで弾いた「人形の夢と目覚め」や弾かなかった曲を演奏していた。弾き足りなかったみたいにして、ピアノを弾くのがとにかく楽しそうにして、弾いていた。率直な、明るい音だった。

ミリカローデンのロビーピアノは上に書いたようにパブリックピアノとして公開されているが、ロビー(エントランスホール)も改修工事で4月から1年間使用できなくなる。それまでのこと、それからのこと(が何かわかれば)を、あまり遠くないいつか、ここで少し書けたらと思っている。

 

ミリカローデンの建物を出ると、脊振の山々が見える。「ピアノの祭」に出演したり聴きに来たり、ロビーのピアノを聴き弾きに来たりするたび、脊振の山々をここから眺める。ピアノリレー終演後の脊振の山々は、春の日差しの向こうに遠くそびえていた。

 

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【追伸】

ピアノリレー当日の演奏がお2組、ミリカローデン那珂川の公式チャンネルで公開されている。

https://www.youtube.com/watch?v=SNjSYq93bj0

https://www.youtube.com/watch?v=qd_qOnAAxVU