或る草の音

そこにある音楽 ここに置く音楽

ストリートピアノの風景 その場の音と人と出来事と【2023年夏】 その1

 

 

 パブリックピアノ(いわゆるストリートピアノや駅ピアノ、ロビーのピアノなど誰でもどうぞのピアノ)が設置され公開されている場では、ピアノを弾く人、聴く人、通って行く人やその場所に居合わせる人たちのあいだでいろんなことが起きる。ピアノを弾く人もさまざま、弾く曲や弾き方もさまざま、起きる出来事もさまざま。前回記事にそうした話を少し書いた。

 

 私は自分が訪ねたピアノの場でいろんな方の音を聴きながら、ときどきメモを取っている。そのメモを読みながらそのときの現場のことを思い出して、そのさまざまな様子を書いてみたい。自分がそのピアノを弾いた話や出来事に関わった話も少しとりまぜる。

 場所や日時の詳細は伏せるけれど、2023年の夏(6月〜8月)の出来事。自分がこの時期に訪ねたピアノの場は福岡県の一部と佐賀県の一部の場所。いくつかの場所、いくつかの日時を1回の記事にまとめて、数回投稿しようと思う。また1回分だけ、生のメモに近いかたちで書いてみようと思っている。

 すべての方の演奏の様子を均等に取り上げているわけではないけれど、そのときのその場の様子の幅やバラエティがわかるように、いろいろな弾かれ方や出来事をなるべく取り上げて書くようにした。

 1つの場所の1つの日時を***でいちおう区切っている。でもどの場所でもけっこういろんなことが起きているのを読み取っていただけるのではと思う。当地のパブリックピアノの場の実際がいくらかでも伝わるならうれしい。

 

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 イベントで設置された臨時のストリートピアノ。なかなか弾く人がいない。しばらくしてイベントのコンサートに出演なさった方々がやってきて、その中からこどもさんがピアノに向かった。歓声が上がる。こどもさんは習っているらしき古典の曲をしっかり弾いて、また歓声を受けていた。

 

 こどもさんがピアノを弾きたそうに見えるのだが弾こうとしない。そのまま親御さんとともにピアノを後に去っていくのを見て、何と言ったか覚えていないが声を掛けて弾くのを勧めた。私が急いでよく知られた曲をピアノで弾いたら、戻ってきてくれた。ピアノを空けた。こどもさんはしばらくためらっていたけれど、やがてピアノに向かって、ゆっくり、こつこつとメロディーを弾き始めた。弾き終えて私のところへやってきた。家で鍵盤ハーモニカで練習しているらしい。もう1曲じっくりと弾いて、ほかのこどもさんと交代しながら何度かピアノに向かっていた。ひとしきり弾いた後、親御さんと帰っていった。

 

 こどもさんが元気よくメロディーを弾いたり、途中まで弾いたり。

 

 投稿動画をたくさん載せている若い方。演奏を始めると、まわりでくつろいでいた方々のあいだの雰囲気が、聴く雰囲気にさっと変わった。弾き終えた後に聴いていた方から話し掛けられたりもしていた。

 

 御年配の方が白鍵で独特の間合いで、少し懐かしい歌謡曲をお弾きになった。

 

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 こどもさんがひとりでピアノを弾いていた。ここのピアノの場は時間貸し。こどもさんはテレビアニメの歌やこどもたちがよく知っている季節の歌を次々と弾いていた。次の時間枠で私がピアノを弾いているときもそのこどもさんが聴いてくれていた。あとで尋ねるとピアノを習っているそう。変顔をして見せてくれた。

 

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 こどもさんが戦場のメリークリスマスを弾いた。拍手すると「間違えた」と照れくさそうに言って去っていった。

 

 親御さんがつきっきりで指導か何かするようにして、こどもさんが弾いていた。

 

 大きなこどもさんがエリーゼのためにと何か最近の曲を弾いて、後から来た親御さんと去っていった。

 

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 親御さんが紡ぎ歌を弾くその両側で、こどもさんが音をがんがん鳴らしていた。

 

 おとなの方がトルコ行進曲を、ひさしぶりに弾いてみる感じでお弾きになった。通りかかった方がお知り合いだったようで、弾き終えてどなたかを待つ様子でその方とお話しになっていた。

 

 私が曲を弾き始めたらすぐに小さなこどもさんがお連れの方とやってきた。交代しようとしたけれど弾くのかどうかわからない様子だったので、代わらずにきらきらぼしを弾いた。それから音をいろいろ鳴らしてみせた。けっきょくこどもさんは鍵盤に触れなかった(と記憶している)けれど、私がピアノの低音部の鍵盤でここはまた別な音がするよと話をすると、こどもさんが、ドーンていう、と言って、知ってるの?とお連れの方が驚いていた。どこかでピアノに触れていたことがあるのかも。そして楽しそうに改札を通っていった。

 

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 以前公園で楽器を演奏なさっていた方がこのごろここのピアノをお弾きになっている。今日もお目にかかった。親御様の介護の合間に出かけているそう。次の用事へと去って行かれた。

 

 お二人で渚のアデリーヌなどの有名な曲をお弾きになっているところへ、ほかの方がやってきて話し掛けておられた。その話し掛けた方が次にお弾きに。いろいろな曲を部分だけも含めてお弾きになった。最後にちょっと懐かしくなる曲をお弾きになったので、立ち去り際に話し掛けた。まだ弾けない、とお話しになって去って行かれた。

 

 腕の立つ方が聴き応えある演奏を繰り広げるその後ろで、以前ここのピアノでいろいろと音を鳴らして楽しんでおられた方が行き来しておられた。待っているような様子だったけれど、そのうちお姿が見えなくなった。

 

 

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 ピアノの場所にやってきたものの、どなたも弾かない時間が続く。自分が弾いたら、その後すぐ、こどもさんがピアノを鳴らして行った。

 

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 懐かしい歌謡曲をお弾きになった方にこどもさんを連れた方が拍手を送っていた。

 

 こどもさんが二人、おとなさんが二人、それぞれにピアノを鳴らして行った。

 

 御家族連れのこどもさんたちが続く。ただ鳴らすこどもさんも、曲を演奏するこどもさんも。一度ピアノを離れたこどもさんが、ほかのこどもさんたちが弾いた後にまた戻ってきてピアノを弾いていたりもした。

 

 自分が弾いていると、だいぶ酔った感じの方がご機嫌な様子でやってこられた。言葉がわからない。ピアノを鳴らしてもらう。鳴らしているうちにだんだんメロディーになってくる。ドドドソ、ドドド。そうしているうちに、電車が来たのかあわてて立ち上がって去って行かれた。

 

 こどもさんがピアノを鳴らす様子を親御さんが撮影。

 

 こどもさんがピアノの中音域、高音域、低音域をそれぞれ鳴らす。親御さんがやってきた。私がピアノを後にして歩いていると、ピアノの音でドレミの歌が聞こえてきた。

 

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(続く)

ストリートピアノの風景その2

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