或る草の音

そこにある音楽 ここに置く音楽

ストリートピアノの風景【2023年夏】 その5

 

 

 

この夏に福岡・佐賀のパブリックピアノ(ストリートピアノ、駅ピアノ、公共施設のロビーピアノなど「誰でもどうぞ」と開かれているピアノ)を訪ねて聴き弾きした私の体験記、今回がラスト。

 

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この夏の体験記の最後は、ピアノの場の現地で時間を掛けて滞在して聴いていたときのことを書きたい。2日分。日にちは連続ではない。1日目は2時間50分ほど、2日目は4時間半ほどピアノの場にいて、ピアノから少し離れた所でさまざまな方々の音を聴いていた。

自分のメモに、お弾きになった方々の見た目のおおまかな御年代とグループの人数、曲目やジャンルをわかる範囲で書いていて、今回はそのメモをたよりに、お弾きになった方の全員を時間順で書きたい(注1)。

ピアノを囲んで複数の方々のあいだで交流が起きるようなことも何度かあった。自分も関わったりしている。それもメモに書いているので、そのときの様子も手短かに書こうと思う。ピアノの場の雰囲気だったり、その場で起きたことの流れだったりを読んでいただけたらありがたい。

 

今回も場所と日時の子細は伏せる。曲目も、これを載せると弾いた方がほかの人から特定されそうな曲については載せていない。もちろん私がわからなかった曲はタイトル無しで、聞いた感じでのジャンルを書いている。

ピアノの場でこんなことがあったという話はこれからも何かのときに書くと思うけれど、それは断片的に書くつもりで、こうしてたくさんの出来事を通しで書くのはひとまずこの夏の体験記だけにしようと思っている。

 

ストリートピアノというと世間ではユーチューバーばかり弾いているとか偏ったイメージが持たれている様子があるけれど(注2)、少なくとも私が訪ねて聴き弾きしている福岡や佐賀のピアノの場では、いろんな方が弾いたり鳴らしたりして、いろんな出来事が起きている。今回の記事を含めてこの体験記を通して、ストリートピアノ、パブリックピアノの実際の姿の一例二例が、そしてそうしたピアノの場が開く可能性みたいなものが、いくらかでも伝わっていったらいいなと思う。

 

 

注1:

ピアノに向かわれたそれぞれの方やグループ(御家族連れ、御友人同士、カップルらしき方々)を1組ごとにアルファベットで書いている。1日目の方々は大文字、2日目の方々は小文字。「私」は私が弾いたとき。アルファベットの横の数字は来られた御人数。今回、グループで来られた方々はその中のどなたかお一人だけがお弾きになることがほとんどだった。グループの中の複数の方がお弾きになった場合は文章の中でわかるように書いた。

注2:

メモにはお弾きになる方が動画を撮っているかどうかはあまりきちょうめんに記録していない。私が訪ねている福岡や佐賀のピアノの場では、グループで来られた方のお一人がピアノを弾いているあいだ、ほかの方がスマートフォンでその様子を撮っている光景はふつうにある。またお一人で来られた方がピアノの脇にスマートフォンを置いて撮影していることもあまりめずらしくはない。そうした方が動画をどこかに上げているか、御自身や御仲間内だけで視聴しているかはわからない。ただ三脚を使って撮影する人はめずらしい。ユーチューブなどに積極的に動画を上げている方も数人存じ上げているけれど、どなたも良心的に場に臨んでおられる。現場はユーチューバーが占領、みたいな状況からはほど遠い。そこは今回の記事含めてこの体験記をざっと通して読んでいただけると伝わるのではと思う。

 

 

 

*** 1日目

 

A1 おとなの方。Summerを優しくお弾きになった。

 

B4 中学生くらいの方々。お一人が何かの曲をジャズ風にお弾きに。聞いたことがある曲だったけれど曲名はわからない。

 

C2 おとなの方。お一人がLet it beをお弾きに。

 

私 短い即興演奏をして、Aquaを弾いた。後ろから来られた方に拍手をいただいた。

 

D1 おとなの方。楽譜をたくさんお持ちになり、ぱたぱたと楽譜をめくりながらクラシック曲を続けて5曲お弾きになった。

 

E2 こどもさん。親御さんと一緒にDの方が弾いている後ろに来られて、Dの方と交代してお弾きになった。ドビュッシーアラベスク1番。

 

Dの方がまたお弾きに。ドビュッシーつながりということなのか、月の光を少し弾きかけて、月光第1楽章にチェンジなさった。さらにクラシックを1曲。

 

F4 こどもさん。メロディーだけで、大きな古時計、いつも何度でも。年上のきょうだいさんらしきこどもさんと、もっと小さなこどもさんが隣についていた。

 

私 いつも何度でもを少し弾いた。Fのこどもさんが戻ってきて見てくれた。こどもさんがにこにこしているので、いま弾いとったねと声を掛けると、首を振って逃げていった。そのあと、聴いてくれていたかどうかわからないけれど、さんぽとSummerを弾いた。

 

G1 おとなの方。アラベスク1番、ショパンノクターンノクターンは私も好きな曲だったので話し掛けた。福岡の方ではないとのこと。これまで弾いたアップライトの中でいちばんいいとのお話。ショパンがお好きとのことだった。しばらくお話をしてその後お立ち去りになった。

 

H2 こどもさん。親御さんとやってきた。千本桜をお弾きに。

 

I1 そこへやってきたおとなの方。ヨーロッパの方だそう。Hのこどもさんに即興演奏の仕方を教えている様子。コードを、C・Cm・C7とお教えになり、それで弾いてみるようにと話している感じ。

 

 こどもさんと親御さんとその方とで、ピアノのそばでいっとき話をなさっていた。おもしろそうなので私も近くまで行って聴いた。Iの方が御自身で少し即興をお弾きになった。NHKの駅ピアノ海外編を見聞きしている感じだった。飛行機の時間が迫っているようで、そこまででお立ち去りになった。こどもさんはびっくりしながらもおもしろかったよう。そういう即興をするのもまたピアノの楽しみですね、と、そのこどもさんと親御さんに話した。Hのこどもさんと親御さんはそのあともしばらくピアノの近くでほかの方々の演奏を聴いておられた。

 

J2 おとなの方お二人。お一人がもうお一人に弾いて聞かせる感じ。

 

Eのこどもさんが戻ってきた。ほかの方々の演奏を親御さんと聴いている。

 

Hのこどもさんがまた千本桜をお弾きに。

 

K1 おとなの方。Hのこどもさんの千本桜を聴いていたようで、千本桜をお弾きになった。

 

Gの方が戻ってこられた。そこにいるEのこどもさんがさっきアラベスク1番を弾いたことをお教えした。

 

Gの方 アラベスク1番をお弾きに。弾き始めると、聴いていたEのこどもさんが驚いて、笑顔になった。弾き終えてEのこどもさんと親御さんとお話しになっていた。

 

L1 おとなの方。カリブの海賊、ほか2曲お弾きに。

 

M1 おとなの方。1曲。

 

N1 おとなの方。バルトークみたいな作風の曲。

 

 そのあと、Gの方とEのこどもさんとがピアノに向かい、こどもさんがアラベスクを部分的にところどころ弾き、Gの方がそのつど何かお話をされていた。その場で即席のピアノレッスンが始まったみたいなご様子だった。

 そのあいだ私は離れた所で聴いていた。やがてGの方がお立ち去りになり、Eのこどもさんと親御さんもお帰りになった。

 

O1 スーツ姿の方。何かポップス風の曲を、つかえつかえしながらもお弾きになった。

 

私 少年時代を弾いた。

 

P3 おとなの方々。大声を機嫌よく出しておられた。お一人がねこふんじゃったをちょっと間違えながらお弾きになった。

 

 以前ここのピアノでクラスター奏法というか音のかたまりを優しいタッチで鳴らしておられた方が、ピアノの場の近くにずっと居られて、いろんな方々がお弾きになるのを聴いてらっしゃった。一緒に聴きながら少しお話をした。ほかの方の演奏に手拍子を送っておられた。

 

 

 

*** 2日目

 

ピアノの場に着いたけれど弾く方がおられない。今日は早めに弾こうと思って、Summerを弾いた。

 

a3 こどもさんが白鍵でAからのスケールをお弾きに。

 

私 Aquaを弾いた。

 

b5 やや大人数のおとなの方々。お一人がねこふんじゃったをお弾きに。

 

c1 おとなの方。バラード3番。

 

aのこどもさんがいるのが見えたので、ピアノに出て行ってさんぽを立奏した。

 

しばらくのあいだ誰も弾かない。

 

d1 おとなの方。楽譜を立てて、時代をお弾きに。

 

 ここでやってきた方がピアノを弾いているdの方に話し掛けて、時代をdの方のピアノに合わせてお歌いになった。そのあとお二人で話をしながら、dの方が糸と愛のあいさつをお弾きになった。初対面のご様子だが、共通の話題でお話が弾んでいたようだった。

 

e1 その話し掛けてきた方。dの方がお立ち去りになったあと、演歌をメロディーだけでお弾きに。そのあとで私もこの方に話し掛けた。

 

f1 ときどきお見かけするおとなの方。千本桜などをお弾きに。後ろでお聴きになる方々が。

 

g1 ときどきお見かけするおとなの方。コナンをお弾きに。そのあとほかの方と入れ替わりで何度かお弾きになった。

 

h1 ときどきお見かけするおとなの方。いつものように、いろんな曲を間断なく手早くお弾きになった。伴奏をよく聴いていたら、休符のときにベースで直前のメロディー音を繰り返すという仕方で伴奏を付けておられるようだった。

 

i1 若い方。悲愴第3楽章。

 

私 少年時代を弾いた。聴いてらっしゃった方から、もっと弾いてくださいと言われた。

 

j1 おとなの方。聞き覚えがある曲だったけれどわからなかった。

 

k1 おとなの方。丸の内サディスティックほか、全4曲くらいお弾きに。

 

l1 交代したおとなの方。演奏会用のクラシック曲。

 

m3 おとなの方々。お一人がアンドレギャニオンの曲やピアノマンなど3曲ほどをお弾きに。そのあとピアノの近くに残って、話をしながらほかの方々の演奏をお聴きになっていた。

 

n2 おとなの方お二人。お一人がロックの曲をお弾きに。

 

o1 おとなの方。Kiroroの歌。

 

p4 御家族で来られて、こどもさんお二人がお弾きに。何か教材曲らしき曲、そしてエンターテイナー。

 

q4 若い方。何か歌らしき曲。

 

r2 若い方。ゲームの曲?

 

s1 若い方。ゲームの曲?

 

私 Summerを弾いた。拍手をいただいた。

 

 mのお弾きになった方にピアノマンすてきでしたと話し掛けた。私の演奏にもありがとうございましたとおっしゃっていただいた。その場を後にした。

 

 これで帰るつもりだったけれど、近くの公園で少し休んで、またピアノの場に戻った。ピアノを弾く方も囲む方もどなたもおられなかった。この日の自分の最後に、グリーグの農夫の歌と、What a wonderful worldを弾いた。静かに弾き終えた。

 

 どなたか弾かれるのをもう少し聴きたいと思ってその場に残っていたら、調律の方が来られてピアノの調律が始まった。挨拶とお礼を申し上げて帰途についた。

 

***

 

 

ストリートピアノの風景、お読みくださりありがとうございました。