或る草の音

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瀧廉太郎「憾」作曲から120年(1)〜最近の研究・演奏の動向をまじえて

★ この記事を掲載公開した後もこまごま加筆修正しています。大きな変更をしたときはここの位置でおしらせします。

大分県立芸術文化短期大学の名称を誤って書いていましたので修正しました。申し訳ありません。2023年1月29日

 


瀧廉太郎のピアノ曲「憾」の自筆譜が草稿段階のものを含めて大分県竹田市に寄贈されて早や4年になる。完成稿と見られる「憾」自筆譜にはDen 14. Februar. 1903というドイツ語の日付が書かれていて、「1903年2月14日(に)」を意味する。これが完成の日付と考えられるので、今年2023年の2月14日は「憾」の完成から120年ということになる。


自筆譜の所在が明らかになったことで、「憾」の楽曲研究が今後進んでいくことが期待される。このブログでも以前そうした話を記事に書き、そのときに大分県立芸術文化短期大学の喜多宏丞先生が竹田市所蔵の「憾」自筆譜をもとに精力的に「憾」の研究にお取り組みになっていることをご紹介した。

そのときの過去記事:

瀧廉太郎「憾」自筆譜をめぐる研究の動向(1) - 或る草の音

 

一昨年の2021年、その喜多先生が、草稿を含めた「憾」自筆譜の校訂譜を論文として御発表になった。現時点で最も原資料に近い印刷譜であるということになるかと思う。部分的な草稿も、時期が前後する原稿に差し入れて曲の形でまとめられていて、各々のアイデアを楽曲として捉えて演奏できるようにする意欲的な試みでもあると言えそう。

以下のリンクから読むことができる。自筆譜に基づいて「憾」の演奏をなさりたい方、「憾」や瀧廉太郎の楽曲に関心をお持ちの方はぜひお読みになられたらと思う。


瀧廉太郎《憾》:手稿譜に基づく校訂楽譜の作成

喜多宏丞

大分県立芸術文化短期大学リポジトリ

↑リンク先のページで、論文タイトル下のpdfファイルのアイコンがある「59(51-70)   (1.65MB)」というリンクからダウンロードできます  

 

 

それからこちらは「憾」自筆譜がまだ竹田市に寄贈される前、つまりその内容がまだもっぱら、自筆譜のコピーを掲載した『瀧廉太郎 資料集』とそれに基づいたミューズテック版の楽譜で知られていた時期だけれど、ピアニストの河原千尋さんが2018年10月にベルリンで、その自筆譜内容に基づいて「憾」を演奏なさった動画が公開されている。

以前に河原さんの御関係の方からこの演奏や、学会での御発表についてお知らせをいただいていた。今回動画が公開されて、多くの方が河原さんの「憾」演奏を聴けるようになってよかったと思う。「憾」自筆譜に基づいた演奏の動画は喜多先生の動画があるもののまだ数少ないので、ご関心をお持ちの方はぜひご視聴になられたら。


滝 廉太郎「憾」Bedauernswerth  自筆譜に基づいて

滝 廉太郎「憾」Bedauernswerth 自筆譜に基づいて - YouTube

 

 

自分のことを書くと、今度の2月14日に向けて自分も「憾」にひさしぶりに取り組んでいる。その前後ででも、どこかのピアノで弾きたいと思っている。

自分はこの10年くらいパブリックピアノでいろいろな曲を弾いていて、今度の「憾」も気持ちとしてはパブリックピアノで弾きたいのだけれど、今回はスタジオのような場所を借りて弾くかもしれない。

ちなみに瀧廉太郎がこの曲の最終稿を書いた1903年2月当時に住んでいた場所は、現在の大分市中心市街地にあたる。その近くに現在ストリートピアノがあるらしく、そうしたゆかりある場所でどなたか「憾」を演奏なさったらよろしいのではないかと思ったりもしている。

 

作曲家の生誕何年、没後何年ということをあまり意識せずに作品と関わっていきたい気持ちが最近は自分は強かったけれど、いつのまにかこういうふうに関わっていっている。やはり、記念したい気持ちがたしかにあるのはある。

グリーグが今年生誕180年で、昨年の御誕生日から抒情小曲集を少しずつパブリックピアノで弾くということもやっている。今年は、そのようにやっていくことにしようと思う。