或る草の音

そこにある音楽 ここに置く音楽

ストリートピアノの風景【2023年夏】 その2

 

 

私が訪ねたパブリックピアノ(ストリートピアノ、駅ピアノ、ロビーピアノなどの誰でもどうぞなピアノ)の場でのピアノ聴き弾きと起きた出来事の体験記。場所と日時の詳細は今回も省略している。

一部の内容は先だってnoteに投稿したことがある。今回新たな話を追加し、わずかに修正をして、こちらに再掲載した。

 

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 バッハの2声のインヴェンションみたいな感じの曲を手堅くお弾きになった方が立ち去った後、連れ立って来られた御年配の方がほかの方々に待ってもらって、童謡だったか映画の歌だったか、何か懐かしい感じの曲をとつとつとお弾きになっていた。

 

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 このピアノの場所でよくお見かけする、お仕事帰りらしき方。いつものようにむかしの歌謡曲をお弾きになった後、有名なピアノ曲を途中まで弾いてお立ち去りになった。

 その後に来られた方はポップスをお弾きに。後ろで何人もの方々が立ち止まっていたけれど、それに気づいてはいらっしゃらなかったのではと思う。

 

 その次の方はクラシックの有名な曲の有名なアレンジなどを、続けて何曲かお弾きに。その途中、やってきた方がその方が弾いている横から声を掛けて、弾いている方がびっくりして声を上げた。どうもお知り合いの方のよう。しばらくピアノの手を止めて歓談なさっていた。声を掛けた方が去っていって、ピアノを弾いていた方がさらに少しピアノを弾き、その方もまたお立ち去りになった。自分はその後に少し弾いた。

 

 私の後に来られた方が、私の前に弾いてらっしゃった方と同じクラシックの曲をお弾きになった。お二方とも同じように手がきれいに動いてらっしゃって、でもそれぞれに違う質感で演奏なさっていた。

 

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 月例イベントのストリートピアノ、この日はなかなか弾き始める人がいなかった。だいぶ時間が経って数人のこどもさんがやってきて、どなたかの親御さんらしき方を前に、弾ける曲をぱらぱらと弾いていた。その後で別のこどもさんが手際よい感じでブルース風の曲を少しだけ弾いて、周囲の方々から拍手をもらっていた。

 

 前回に私がアニメの曲を弾いたとき、出店のこどもさんがその曲が好きで自分でも練習していたらしく、後で弾いたのだった。恥ずかしいみたいで、ピアノの前に座ったもののなかなか手が動かせなかったのを、横で見守ってときどき手伝って、メロディーを完奏した。そのときのこどもさんも会場に来ていたので今日も弾くのだろうかなと思っていたけれど、この日はそのこどもさんは弾き出さなかった。

 

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 建物に入るとクラシックのゆるやかな曲が聞こえた。たぶんこの前ここでこの曲をお弾きになっていた方だろう。自分はいつものようにピアノから少し離れた所で聴いた。楽譜を立てて丁寧に演奏なさっていた。

 

 その方が弾き終えると、若いお二人がピアノの前へやってきた。お一人がピアノ正面の椅子に、もうお一人が隣の椅子に腰掛ける。聞いてもらうのだろう。こうしたピアノの場で定番になっているポップスの曲を、手数が多いながらも細やかなタッチで、そのようにふだんから弾きこなしている感じで演奏なさった。

 その方に遠くから拍手を送りながら、お二人の方々がやってきた。こちらもお若い。弾いていたほうの方々が席を空けて、やってきた方々が入れ替わりでピアノに向かった。お一人がピアノの正面に、もうお一人が低音域のほうに腰掛け、正面の方がメロディーを弾いて低音の方がサポートする感じでワンフレーズを弾いた。そうしたら、いままでお弾きだった方が「○○!」と曲名を叫んで、弾いていたお二人にとてもうれしそうな声でお話し掛けになった。弾いていたお二人も声を掛けられたのが面白かった様子で、受け答えをなさっていたようだった。

 その後、残ったお二人が、曲の途中で止めたり弾くのをやめたりしながら何曲かをお弾きになった。正面の方が譜面台に置いたスマートフォンを見つめて、低音の方がちょうど同じような格好で、並んで連弾なさっているその様子を見ていると、そこにお二人が作る時間が流れているようだった。その時間がちょっととぎれとぎれながら、ひとつの音楽になって、ピアノの場のまわりへと流れ出ていたような気がする。聴きながらその場を失礼した。

 

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 ピアノの場に到着して15分ほど待っていたら、お仕事帰りらしき方がピアノをお弾きになり始めた。有名なアニメ映画の曲。暗譜で、こつこつとした歩みで弾き進めていらした。

 その方がお立ち去りになった後に来られた方は、最近流行したテレビアニメの主題歌のポップスを、ゆっくりとしたバラード風なアレンジでお弾きになった。後ろで若い方々がちょっと立ち止まり、踊るようにしながら去って行かれた。

 その次の方はまわりを見回しながらピアノに近づいて、コピーらしき楽譜を立てて弾き始められた。素朴なメロディーを基本的な音型の低音伴奏で弾いていくアレンジ。なにか大切な曲をお弾きになっているような、上体の動きに心がこもっている感じの弾き方をなさっていた。

 それぞれの方々がお立ち去りになるときに小さく拍手をしてお送りした。最後の方は私を見て、はにかんで通り過ぎて行かれた。

 

 そのあと自分も弾いた。「ぽつぽつ即興」をひととき弾き、ショパン夜想曲op.62-2を弾いた。弾き終えると、後ろに立っておられた方が、カノンを弾いてくれませんかとリクエストくださった。いやカノンは練習をしていないんです…と申し訳なくお話しすると、いえいえすみませんでしたとおっしゃってお立ち去りになった。

 以前に別の場所でピアノを弾いていてカノンのリクエストをいただいたことがあり、そのときもお断りをしたのだが、そのときの方は最初、プロコル・ハルムの「青い影」をリクエストなさった。私がそのとき「青い影」がわからなくて、それで代わりにカノンをリクエストくださったようだった。「青い影」をあとで調べたら、よく耳にしていた曲だった。伴奏の感じがカノンに似ている。リクエストくださった方はどちらの曲もお好きでいらっしゃったのだろう。

 カノンと聞いて、そのときのことをぱっと思い出した。そのためか、カノンのメロディーを思い出そうとしても「青い影」しか出てこなかった。

 それで、代わりになるかどうかわからないけれど「青い影」を弾いた。そのあいだ、カノンをリクエストくださった方は少し離れた所で立ち止まっていらっしゃった。「青い影」を弾き終えた後でカノンの有名な箇所をなんとか思い出した。少し弾いてみたけれど、そちらはうまく弾けなかった。リクエストくださった方はもういらっしゃらなかった。

 

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 この日は遅めの時間にピアノの場に着いた。さっそく、いま弾いてらっしゃる方の演奏を聴く。こうしたピアノの場でよく弾かれるポップスを、わりとゆっくりお弾きになっていた。ゆっくり弾くのも雰囲気があった。

 

 自分も弾いた。弾き終えてすぐ、真後ろに立ってらっしゃった方がこの曲は何と言う曲ですかとお尋ねになった。曲名を尋ねていただけるのはとてもうれしい。その方はギター弾き語りで路上に出てらっしゃるらしい。場所をうかがったが、路上演奏の場という認識が自分にはなかった場所だった。いろんな場所に路上演奏をなさっている方々がおいでなのだなと認識を新たにした。

 

 その後、ときどきお目にかかるポップスをお弾きになる方とお会いした。話をしていると、やはりこの場所でときどきお会いするピアノをお弾きにならない方が来られて、そのポップスピアノの方と再会を喜ぶ感じでお話しになられた。それぞれの共通の知り合いということで、そのこともおもしろくて話が弾んだ。ポップスの方も私もそれぞれに少しピアノを弾いて、その方に聴いていただいた。

 

 その後、ねこふんじゃったを途中からちょっと違う感じでお弾きになる方、先日声を掛けて話をした校歌をお弾きになる方が続いた。

 

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(続く)

ストリートピアノの風景【2023年夏】その3

https://draume.hatenadiary.jp/entry/2023/10/13/000126