或る草の音

そこにある音楽 ここに置く音楽

2021年春のピアノリレー参加記二題 その1:春日市のピアノリレーマラソン

 

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221日に春日市ふれあい文化センターの「ピアノリレーマラソン」に参加した。

ピアノリレーマラソンのことは旧サイト『遠い遠い夢の世界』の自由帳(過去分: http://draume.g3.xrea.com/jiyucho/index.html )にたくさん書いているけれど、一般の方々がどなたでもエントリーできるピアノイベントで、だいたい毎年聴きに行っていて、ときどき(2回に1回程度)申し込んで出演している。 

今回はもともと昨年の夏に開催予定で、昨年のたしか4月に出演申し込みの受付が始まったのだった。例年申し込みが多く、受付開始後すぐに定員に達する。私は受付開始の日に申し込みに行けないことが多くて、この5年ほどは出演していない。ただ今回の受付はコロナ禍ということでインターネットで応募できたので、それなら申し込めると応募した。昨年4月は緊急事態宣言の発出中だったが、そのためか応募もゆっくり集まっていたようだった。

以前からステージで弾いてみたいと思っていた曲があり、その曲を今回のピアノリレーマラソンで演奏しようかとぼんやりと思っていた。しかしコロナのいわゆる第2波が来て、夏の開催が今年の2月に延期となった。だいぶあいだが空いて、その間に当初思っていた曲への気持ちが薄まってきた。

演奏曲目の申告を年末にすることになっていたけれど、申告のときにすんなりと、グリーグの「春に寄す」を選んだ。「春に寄す」は以前、次の投稿で書くつもりの那珂川町(現在は那珂川市)のピアノイベント「ピアノの祭」で演奏したことがある(2014年)。そのときに思っていたことは旧サイトの自由帳に書いた。今回はもう少し思いが深まった気が自分ではしている。「春に寄す」についてはまた別のときに書きたい。

 

今回はあまり長い時間客席で聴くことが推奨されていない様子があり、当日は私も自分の出演する最後のセクションだけ聴くことにした。午後の少し日が降り始めてきたくらいの時間に会場に着いた。受付や入場がコロナ対策のため手順が増えていた。比較的難しい曲を弾く中高生の方々や大人の方々が演奏なさる時間帯。客席で拝聴する。多くの方が、多少つっかえながらもそれぞれに音楽を存分になさっていた。

セクション最初数人の方の演奏が終わると自分も舞台袖に行って待機していなければならない。舞台袖は待機の方々がだいぶ散ったかたちで着席なさっていた。その中で立ったり座ったりからだをほぐしながら出演順を待った。おひとりおひとり順番が来て、ステージへ向かっていく。ステージへ向かうとき、ステージから戻ってくるとき、それぞれどちらかというと硬い表情の方が多かった。今回はコロナのことがあるのでこちらからも話しかけたりしなかった。小さく拍手だけお送りした。

中学生か高校生の方だったかと思うが、おひとり、ステージから戻ってきてちょっとにこやかな顔をなさって、舞台袖を去っていかれた。演奏はたぶん御自身が思っていたのと違うことになったのではと思われる箇所があったのだったが、そのことも含めて、ステージでの演奏を喜んで終えられた感じが、そのちょっとのにこやかさから伝わってきた。

私もステージに立つのはひさしぶりだった。礼をし、椅子をセットし、着席してスタインウェイを少し眺めて、弾き始めた。最初の音からすんなりと弾くことができた。弾きながらだんだん鼻水が出てきて、残念ながらいくらか気が散ってほころんでしまった箇所があったが、自分なりに、自分なまりで、弾ききったと思う。ありがたいほど透き通った音が鳴っていった。

 

終演後、またご応募くださいね、とスタッフの方からお声を掛けていただいて、ふれあい文化センターを後にした。帰り道、上弦を過ぎた月が高く昇っていた。街路樹のこぶしが花芽を空にたくさん掲げていた。

 

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その2日後、もうひとつ別のピアノリレーに出演した。途中に少し書いた、那珂川市のピアノイベント。そのときの話を次の投稿で書こうと思っている。