いつもは3月いまぐらいから咲き始める白木蓮が、今年は早かった。早く開いた花はすでに花弁が落ち始めているが、いまはまだ多くの花を、空に向かってカップのように差し上げている。
白木蓮の花は、曇りの日には空よりも白いことがある。いわゆる純白とはちがう色だけれど、青い空の日だとほんとうにあざやかに輝いている。その日々そのときどきで、白木蓮は空にちがったふうに映えている。
日暮れの頃に窓の外に目を遣った。白木蓮の花は空に差す影になっていた。むらさき色が見えた覚えがあるが、空だったか花だったかわからない。