或る草の音

そこにある音楽 ここに置く音楽

きつつき

きつつきが来た。窓を開けていたので音で気付いた。最初は白木蓮の木をつついていた。かなり勢いよく、かんかんと音を立ててつついていた。その後、窓から見えない別の木に移ったようで、高さの違う音がこんこん鳴っていた。リズムがあるようにはあまり感じなかったが、乾いた音があたりにくっきりと響いていた。

 

きつつきがなぜ脳震とうにならないか、という話をどこかで聞いたような気がするが、それと似ているような似ていないようなことで、きつつきは自分が立てている音をあまり聞いていないような気がした。というより、音を聞いてそれによって自分の行動、木のつつき方を変えたり調整したりする、というような繊細なことをしていないように、音が聞こえた。鳴りっぱなしの音という感じだった。しかし私がもっと繊細に聴いていたら何かに気付いたのだろうか。

 

後で外に出て、白木蓮の木を見てみた。木の朽ちた部分に、きつつきのくちばしの跡らしき小さな穴が残っていた。そういえばこのあたりで少しとどまっていたようだった。音を思い出した。